半導体は、産業のコメと言われ民生分野、産業分野、軍事分野などのあらゆる電子機器に組み込まれて使用されている。その半導体を作るための特殊な装置が「半導体製造装置」である。
昨今、この半導体の製造をめぐる争いがアメリカと中国の間で発生している。なぜ、このような問題が起きるのか、技術的な側面からこの理由を詳しく解説する。
半導体の製造方法と性能とは?
半導体はどこに使われるか
半導体は、大半の電気製品の中で使用されるCPU(英:Central Processing Unit)や各種IC(英:integrated circuit)として電子基板上に搭載されている。その機能は、電子機器の制御や指示命令を行う頭脳としての役割を果たしている。
例えば炊飯器では、ご飯の炊き方の温度や時間を制御して美味しいごはんが炊けるようにコントロールする。また自動車では、ECU(英:Electronic Control Unit)と呼ばれる制御装置に半導体が使われ、エンジン内のガソリン燃焼を制御して快適なドライブができるようにしている。
半導体プロセスの性能はどのように判断するのか
半導体性能を判断する重要な指標の1つに、「ムーアの法則」が有る。これは「半導体の集積率が18ヶ月で2倍になる」という経験則で、インテルの創業者ゴードン・ムーアが1965年に提唱した。この法則によれば、半導体の性能は1年半~2年で処理能力が倍増することを示している。
半導体の集積率を上げるためには、半導体の回路全体が小さくなることが必要である。それに伴い加工できる回路の線幅がどんどん細くなる。1990年代に0.5μm(マイクロメートル)の回路線幅は、2022年の最先端半導体で7nm(ナノメートル)になり、さらなる微細化が進められている。
(注)1マイクロメートルは、0.001mm、1ナノメートルは0.000001mm
半導体製造装置とは
半導体製造工程とその製造装置とは
半導体の製造は大きく分けてウェハー上に電子回路を形成する前工程と、完成した半導体をチップに切り分ける後工程に分かれる。そこでプロセス毎に使用される装置は、半導体製造装置(総称)と呼ばれている。
前工程で使用する主な装置は
- 露光・現像装置(ウェハー上に微細な電子回路を形成する)
- エッチング装置(形成した回路以外の部分を削り取る)
- 洗浄装置(基板上の汚れを取る)
- 成膜装置(金属や化合物の薄膜を形成する)
- イオン注入装置(イオンを電子回路に注入する)
後工程で使用する主な装置は
- ダイシング装置(ウェハー上の半導体を小片のチップに切り出す)
- ダイボンディング装置(切り出したチップを取り出し、支持体に接着する)
- ワイヤーボンディング装置(チップ上の電極と外部電極を金線で結ぶ)
- モールディング装置(半導体パッケージを樹脂等で保護する)
- 検査装置(半導体の電気的機能を検査する)
ここで、特に重要な装置は1)露光・現像装置、2)エッチング装置、3)成膜装置であり半導体の性能を左右する。
半導体製造装置メーカーとシェア
(出典:日経XTECH/)https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00138/071501087/
図1 前工程/後工程での主な半導体製造装置
上記の図より前工程の露光装置ではASML(オランダ)のシュアが95%と非常に高い。この理由はASMLの特徴である「EUV(極端紫外線)露光装置」を供給できるメーカーであり、キャノン(日)、ニコン(日)では、この装置開発をしておらず今後ともこのシェアは高まるものと考える。
エッチング装置は、回路形成後に絶縁膜や導電膜を選択的に高い精度で削り取る工程である。この装置はラムリサーチ(米)、東京エレクトロン(日)、アプライドマテリアルズ(米)の3社で9割の高いシェアを持っている。特に、ラムリサーチ(米)は層構造を取るNAND型メモリ用エッチング装置では高いシェアを持っている。
枚葉式CVDは成膜装置としてウェハー上に金属や化合物の薄膜を作る機能を有している。この装置はアライドマテリアルズ(米)、ラムリサーチ(米)、東京エレクトロン(日)の3社で7割のシェアを占めている。
つまり、前工程では、アメリカ、オランダ、日本で装置全体のシェアの大半を抑えていることがわかる。
まとめ
現在、半導体の線幅は7nmであり今後さらに2nmルールの先端半導体の開発へ向かっている。しかし、先端半導体を製造できる装置は、残念ながらアメリカ、オランダ、日本の3か国のメーカーに集中しているため、その装置メーカーから購入せざるを得ない。
現在、中国はこの先端半導体の製造を狙っているが、アメリカは軍事や通信分野の優位性を保つため中国への輸出規制が厳しくなっている。
よって、輸出規制による装置事業への影響を鑑みて投資判断を決めることが必要である。
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