CHEMトラストへの報告
(https://chemtrust.org/wp-content/uploads/Chemical-Recycling-Eunomia.pdf)
(本記事は上記PDFの翻訳であり、一部訳者の主観にて原文を意訳している部分があることを理解頂きたい)
著者:サイモン・ハン トビー・コノック 2020年12月8日
Joe Papineschi (Project Director)
Eunomia Research & Consulting Ltd
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免責事項:ユーノミア・リサーチ・アンド・コンサルティングは、本報告書の作成にあたり、提示された全ての事実と分析がプロジェクトの範囲内で可能な限り正確であるよう細心の注意を払った。しかしながら、記載された情報に関していかなる保証をするものではなく、ユーノミア・リサーチ&コンサルティングは本レポートの内容に基づいてなされた決定や行動に対して責任を負うものではありません。
E.1.0 エグゼクティブ・サマリー
本報告書は、ケミカルリサイクルの傘下にある技術の範囲を網羅することである。
プラスチック製造にバージン材等価物を再導入可能な生産物投入に焦点を当てる。また、他の化学原料を製造するプロセスやリサイクルまたは材料回収についても考察を加える。
本報告書の基礎となる研究は、欧州を中心に、世界的に発表された文献を参考にしている。しかし、この急速に発展している産業について、包括的で世界的なレビューを提供するものではない。
本報告書の焦点は、開発された技術の詳細を明らかにし、それらがどの程度成熟しているか、そしてどのポリマーを対象としているかを明らかにすることである。
また、主要なベンチマークと比較した環境性能についても議論する。廃棄物のエネルギー焼却(WTE)、メカニカルリサイクル、バージンポリマー製造など、主要なベンチマークとの比較も行う。生産などについては主要なベンチマークとの比較も行う。最後に、これらの技術が直面する重要な問題についても議論する。
どのような場合に他の選択肢と比較してこれらの技術を活用するのか、また、欧州の廃棄物法制にどのように適合させることができるのかを考察する。
欧州の廃棄物法制ケミカルリサイクルのプロセスは、以下のように大きく3つの技術カテゴリーに分けられる。
●溶剤精製
溶剤精製とは溶解性の原理を利用して、プラスチックポリマーとプラスチック廃棄物を汚染する他の物質から選択的に分離する方法である。
プラスチックポリマーは、プラスチック廃棄物を汚染する他の物質から選択的に分離後、プラスチックは細断され、ポリマーが高い溶解度を持ち、汚染物質が低い溶解度を持つ溶媒に溶解される。
汚染物質の溶解度は低い。従って、汚染物質は固体のままであり、液体画分から分離してポリマーを精製することができる。
ポリマーを精製し精製プロセスが完了したら、ポリマーを再固化させるために非溶媒中に入れて溶液から抽出し回収できるようにする。
●化学解重合
化学解重合とは、化学薬品を使用してポリマー鎖を分解するプロセス、化学薬品を使ってポリマー鎖を分解するプロセス、ソルボリシス【solvolysis:溶解分解】など多くの名称がある。
解重合が起こると、モノマーは反応混合物から回収され、精製される。モノマーを反応混合物から回収し、蒸留、沈殿、結晶化などの方法で精製する。精製後、異物から分離して純粋なモノマーを残す。
●熱解重合
熱解重合とは、熱分解とも呼ばれる。熱処理によってポリマー鎖を分解するプロセスを示す。
本報告書では、熱分解技術のバリエーションに重点を置く。その分解経路は通常、ポリマー鎖のランダムな位置での結合の切断を伴う。
化学的解重合では制御された分解が行われるが、熱分解ではポリマー鎖のランダムな位置で結合が切断される。
このため、得られる熱分解油は通常、多様な炭化水素から構成され、エネルギー集約的な精製が必要となる。つまりポリマー製造の原料として使用する前に、さらにエネルギー集約的な精製を必要とする。
例えば、スチームクラッカー(ナフサの加熱スチームによる分解)。
3つの技術タイプに分類されたリサイクル方法は、本研究で入手可能な情報に基づき、表1にまとめられる。
E.1.1 技術的・商業的成熟度
以下は、技術的・商業的成熟度に関する主な結論をまとめたものである。
●溶剤精製
溶媒精製は、ニッチなケミカルリサイクル用途になる可能性が高い。
現在最も有望なのは、従来の難燃剤で汚染されたEPS(ビーズ法発泡スチロール :expanded polystyrene)である。
溶剤精製技術は、ニッチな化学リサイクル用途である可能性が高い。溶剤精製技術は、非常にエネルギーを必要とするため、機械的リサイクルと競合することは難しい。
生産物はポリマーであるため、このプロセスは機械的リサイクルと同様に扱うことができる。
リサイクル算出規則に関しては、メカニカルリサイクルのルールと同様に扱うことができる。重要なのは、新しいプラスチック製品を再製造するための再加工である。
これは、ポリマー鎖の劣化につながる。そのため、このケミカルリサイクル技術では、材料を無限にリサイクルすることはできない。
●化学解重合
化学解重合は、全体として最も有望と思われる。
特にPET/ポリエステルの場合、解糖と加水分解のバリエーションがあるが、収率は90%以上で、純粋なモノマー原料が得られるとされている。
そのため、リサイクル率やその算出に関する問題は、同様の方法で比較的容易に克服できる可能性が高い。
機械的リサイクルのために作成された同様のルールを使用することで、比較的簡単に克服できる可能性が高い。
リサイクルのために作られた同様のルールを使えば、リサイクル率やその計算に関する問題は比較的簡単に克服できるだろう。
PET包装とポリエステル衣料用繊維の関連性:
この技術は、両種の製品のリサイクル率を向上させるために、興味深い方法で導入される可能性がある。
しかし 特に、PETボトルがデポジット払い戻しシステム(DRS:deposit refund system)の一部である場合、PETボトルの機械的リサイクルに取って代わることはできない。(ボトルからボトルへのリサイクル)
●熱解重合(熱分解)
熱解重合は、最も一般的な方法である。
「熱分解」は、廃棄物産業において燃料を製造するための確立されたプロセスであり、多くの注目を集めている。
しかし、「熱分解」はモノマー/ポリマー生産に直接供給できる原料を生産する方法として導入することは比較的新しい応用分野であり、まだ開発が十分に進んでいない。
熱解重合プロセスは、化学的解重合よりもはるかに制御が難しく、その結果、利用価値の異なる複数の化学物質が生産され、その利用価値は異なる。
熱分解油は、ナフサの代用品として、モノマーを製造するスチームクラッカーで生成される。
このスチームクラッカーでナフサの代用として使用される場合も、モノマーが唯一の生産物ではないため収率が下がる。
燃料ガスもまた、外部燃料源への依存を減らすために、しばしば燃焼プロセスに戻される生成物として利用される。
このことを理解することが、プロセスからのポリマー収率を計算する上で重要である。
一般的に、不均一で汚染された原料を使用することは可能である。しかし、このことは収率を低下させ、現在ではスチームクラッカーに投入するための精製は不可能である。また、この精製ステップも商業規模ではテストされていない。
熱分解油が一貫してスチームクラッカーの厳しい仕様を満たすことができるかどうかは不明である。高度な機械的リサイクルを向上させるために開発されている高度な選別と洗浄の要件も、今後必要になるであろう。従って、これも必要条件となる可能性が高い。
PMMAのようなニッチな用途を除けば、「熱分解」はポリオレフィンの混合(ただしクリーンな)廃棄物のリサイクルに最も有望な方法であると思われる。
特に、特定の種類の廃棄物は分別できるため、機械的リサイクル業者にとっては魅力的でない用途(フィルムなど)を除けば、有望である。
混合プラスチック廃棄物は複数のリサイクル方法に分れ、ケミカルリサイクルやメカニカルリサイクルするシナリオが、最良の利用法であると思われる。
このようなケミカルリサイクルは、透明で公正で、実施可能で強制力のある算定規則を決めることは最も困難である。
その理由はリサイクル経路が一つでなく、複数に分かれるためである。
E.1.2 環境への配慮
本報告書のために実施されたライフサイクルアセスメント(LCA)研究のレビューから、いくつかの重要な考慮点が浮かび上がってきた。
これらの側面は、特に地球温暖化の観点において、結果に最も影響を与える可能性が高い。特にそれは地球温暖化係数が焦点となる場合である。
●エネルギー使用
エネルギーの使用は、一般的に最も重要な側面である。エネルギーミックスも含まれる。特に後者は、ケミカルリサイクルとWTE(Waste to Energy:廃棄物からエネルギーへの転換)間の比較に影響を与える。
そのため、ケミカルリサイクルとWTE間の比較に特に影響する課題を含めるべきである。
●収率
収率もまた、プロセスの実行可能性に影響を与える決定的な要因になる傾向がある。つまり収量損失を正確に計算する必要がある。
研究段階(ラボスケール)や実証機検証段階で実施された研究には、この点に関する多くの仮定が含まれている可能性が高い。
一般的に、特にこの点については、一貫性と透明性が欠如している。
●投入材の品質
投入材(プラスチック廃棄物)の品質は、収率や精製・選別に関するエネルギー使用に大きな影響を与える。
一般に、熱分解プロセス中を流動する物質がきれいであればあるほど、収量は高く、エネルギー使用量は少なくなる。つまり、エネルギー使用量は少なくなる(精製が少なくて済む)ので現実的なシナリオを決定する鍵となる。
高いレベルの投入材品質を達成するためには、特に家庭において排出されるプラスチック廃棄物は、現地での収集や分別を考慮する必要がある。
この側面は、適用される地域の条件により左右される可能性が高く、現在のところ、これを大規模に達成できるかどうかは不明となっている。
●出荷時点の原料品質
出荷時点の原料品質もまた重要であり、LCAは以下のことを追求すべきである。
LCAは、メカニカルリサイクルとケミカルリサイクルの両方について、公平に比較するために、これらのアウトプット品質が分かるよう努めるべきである。
機械的リサイクルされたプラスチックの多くが、バージングレードと同等の用途に使用されないことを認識することは、どのような製品/材料がケミカルリサイクルに最も適しているかを判断するのに役立つ。
これらは、公開と非公開の両方で実施されたLCAから入手可能な情報に基づくものである。
●ほとんどの研究成果は?
殆どの研究成果は、燃料やポリマー前駆体のWTE(Waste to Energy:廃棄物からエネルギーへの転換)またはバージン材の生産との比較にのみ焦点を当てている。これらの比較は、以下のような狭い視点で判断するため、戦略的で長期的な意思決定の基礎を形成することはできない。
そこで将来予測される廃棄物管理のシナリオを示す。
つまりプラスチック廃棄物の再利用案や機械的リサイクルなどの廃棄物管理の選択肢として、例えば、EUまたは各国の提示された目標を達成する方法など、将来予測のシナリオを含めるべきである。
●これまでの環境アセスメントに欠けている重要な側面
これまでの環境アセスメントに欠けている重要な側面の一つは、これらの技術がどのように使われるかを理解するためのシステム視点である。つまり、これらの技術が現実にどのように展開されるかを理解するためのシステム的視点である。
いままでの研究はそれぞれ方法の比較に重点を置きがちで、さまざまな技術が互いに補完しあう可能性は考慮されていない。
比較的性能の低い機械的リサイクルのシナリオと比較しても、現在の熱分解油からモノマーへのプロセスはエネルギー集約型であり、競争するには太刀打ちできないように思われる。
●熱分解プロセス
「熱分解」が実行可能なのは、効果的に機械的にリサイクルできない廃棄物処理フローに限られるようである。
しかし、だからといって、このような廃棄物を削減・防止するための取り組みや、機械的に効果的なリサイクルできる廃棄物の代替品を探すことをやめてはならない。これらは依然として望ましい環境オプションである。
●熱分解プロセスのインフラ投資
現在リサイクル不可能なあらゆる種類のプラスチックを処理するために熱分解インフラに投資することは、環境負荷の増加を「固定化」することになりかねない。
焼却炉に多大な投資をしてきた国々でWTEへのシフトがそうであったのと同様である。
将来のプラスチック使用に関する統合政策は、バイオベースプラスチック(特にバイオPETやバイオPPのような現行プラスチックの「ドロップイン」バージョン)について、現在のLCAの結果では、ほとんどのケミカルリサイクルはWTEより改善されている。
しかし、特に気候変動への影響については、バイオベースプラスチックの場合はそうではないかもしれない。
E.1.3 重要な結論
本報告書を通して、最も重要なポイントは、一般的に以下のようなことである。
多くの技術の実行可能性に関して、確固とした結論を出すために使用できる透明性や確固とした根拠が、一般的に欠如しているということである。
その理由のひとつは、実現可能性よりもむしろ可能性を示す小規模な実験室規模の事例が非常に多いためである。
商業規模(またはそれに近い規模)では、最初に市場に投入するための競争が激しい。
このため、一般に入手可能な証拠(量産試験結果)は限られているように思われる。
この証拠の欠如は、知識のギャップは何を意味するのか。 つまりその答えはあまり好ましくないということである。
これらの技術の役割、規模、範囲を確認するためには、ケミカルリサイクル業界の透明性を高めることが急務である。
少なくともいくつかの技術は有望であることを示す証拠があるが、大量生産の中で化学物質の使用量、およびその範囲に関する重要な詳細情報はいまだに明らかになっていない。
また廃棄物管理の状況におけるリサイクルプロセスの実現可能性に関する重要な情報は、ほとんど欠如している。
ケミカルリサイクルの投資はこれらの欠けている要素に関する理解を向上させるために、自由意志にて実行される組織に向けられるべきである。
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詳細な本文は別途追加するものとする。
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